大判例

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福岡地方裁判所 昭和26年(行)5号 判決

原告 大津貞雄

被告 大牟田市長

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告代理人は大牟田市有明町三六番地上の建物につき被告が昭和二十五年十一月十四日附区整第六一一号を以て為した建物除却命令を取消す。訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求めその請求の原因として、請求の趣旨記載の建物は原告の所有であり、その敷地部分たる本件土地は原告が大牟田市引揚更生会から適法に賃借したものであるところ、被告は昭和二十五年十一月十四日原告に対し前記の通り本件建物を除却すべき旨の命令を発したのである。然しながら本件土地は原告が前記の通り適法に借地権を有するものであるから、その地上に在る本件建物が都市計画事業の施行上支障があるとするならば、よろしく都市計画事業の施行者たる被告としては原告に対しその換地を指定した上、本件建物につき移転命令を発するのが当然であつて、斯る措置に出ずることなく、直にその建物の除却命令を発するが如きことは明に違法たるを免れないのである。よつて茲に右除却命令の取消を求めるため本訴請求に及んだと陳述し、被告の答弁に対し原告に本件土地に対する適法なる借地権がないという点及び借地権にして登記のないもの又は一定の期間内にいわゆる権利の届出がない場合には土地区画整理施行者において換地指定の義務がないという点を除いてその余の事実はこれを争わないと述べた。

被告代理人は主文同旨の判決を求め答弁として被告が原告に対しその主張の如く建物の除却命令を発したことは相違ないが、その余の事実はすべてこれを否認する。そもそも大牟田市戦災復興都市計画は昭和二十一年一月二十四日内閣総理大臣から特別都市計画復興土地区画整理設計の認可があり、一般市民に告示され都市計画福岡地方委員会の決定によつて都市計画事業として施行されることになり、続いて昭和二十五年五月三十一日土地区画整理委員会の審議を経て換地予定地の指定が行われ、これによつてもと大牟田市有地であつた本件土地は整理前の蓮尾又八所有に係る大牟田市有明町四二ノ一番地の換地予定地に指定せられるに至つた。それで原告所有の本件建物は蓮尾又八の所有地内に建てられているのと同じ結果になり、新に換地予定地の指定を受けた者の利用の妨害となるので、茲に土地区画整理施行者たる被告において本件建物の除却命令を発することになつた次第である。而して原告は従前の本件土地につき適法なる借地権があつたから被告がその地上建物につき、直に除却命令を発することは違法であると主張するけれども、大体本件土地は前記の通り換地予定地指定前は大牟田市の所有地であつて、昭和二十三年大牟田市が大牟田引揚更生会に都市計画事業の施行上支障があるときには、何時にても更生会の責任においてその地上建物を除却するという条件の下に賃貸していたものであるところ、その後右更生会は本件換地予定地の指定に際し自発的に地上建物を除却し既に他に移転しているのである。原告は恐らく右更生会から大牟田市の承認を受けず無断で本件土地の一部を転借していたものであろうが、既に右の如くである以上は、原告に本件土地に関する適法なる借地権があるものとは認め難く、然も所有権以外の借地権についてはこれにつき登記があるか又は特別都市計画に関する土地区画整理施行地区の告示があつたのち、一ケ月以内に所有者と連署して、いわゆる権利の届出をしない限り、整理施行者としては、換地指定の義務がないことは特別都市計画法第四十五条但書の明定するところであつて登記のないことは勿論原告においてこのような権利の届出をしていないこと明な本件においては土地区画整理施行者たる被告がその地上に在る本件建物につき直に除却命令を発し得ることは当然であつて、何等違法の廉はないと陳述した。

三、理  由

本件土地が換地予定地指定前は大牟田市の所有地であつて、昭和二十三年大牟田市から大牟田市引揚更生会に特別都市計画に関する土地区画整理上支障がある場合には何時にてもその責任において地上建物を除却するという条件の下に一時貸与せられていたものであること及び原告は右更生会から大牟田市の承認を得ることなく無断でその一部を転借していたものであること並びに右更生会が本件換地予定地の指定に際し自発的に地上建物を除却し既に他に移転していることはいずれも弁論の全趣旨に徴して明であるところ、右の如き転借人に対しては特別都市計画法第十五条第二項の適用はないと解するを相当とすべく、然も本件土地につき借地権の登記がなく、又原告においていわゆる権利の届出をしていないことは当事者間に争のないところであるから、特別都市計画に関する土地区画整理施行者である被告において原告に対し特別都市計画法第十五条の規定による換地予定地を指定することなく、直に本件建物の除却命令を発したことについては別段違法の廉はないと解すべきである。以上の如く本件建物除却命令には原告主張の如き違法の廉はないからその取消を求める本訴請求は理由なきものとしてこれを棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 入江啓七郎)

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